***NO.3バージョン:2***



午後の1時。
姉たちは継母ことNO.362の指導のもと、音楽のレッスンをしていた。
NO.86はダミ声だしホギーは音痴だしおすまし達は歌うというより棒読みだしでとても聴いていれたものではなかったが、それでも聞こえてくるピアノの音などに併せてクキも鼻歌交じりに床を拭いていたところ、ドアのベルがりんと鳴った。

そうだ。シンデレラのお話ではここで舞踏会(!)への招待状が来るんだったわ・・・
そんな事を考えながら玄関へ行きドアを開けると、案の定明らかにお城からの使いですといういでだちをした男(NO.30cだった)が手紙を持って立っている。
「舞踏会の招待状です。町の若い女性はなるべく全員来て下さいとのことです。」
そう言って正装に赤いゴーグル姿というこれまた似合わない姿で手紙を差し出した。クキは受け取りながら去っていく彼を見送って、肩にとまっていたNO.2に
「あの人・・・スーツにうっすらとパイナップルの柄がついてた・・・流石だわ・・・」
と呟いた。
「?何が」
「あ、いや、こっちの話!んふ」

「えっと・・・失礼します」
トントンと二回ノックして、凄まじいアンサンブルが奏でられる部屋に入った。
「何の用だいシンデレラ」
ピアノを弾く手を止めた継母に、先程受け取った招待状を見せる。
「ほう・・・舞踏会への招待状じゃないかい」
「招待状!?見せて!」
「ちょっと!あたしも!」
一番に反応したのはトミー。母親の手から招待状をもぎ取り封筒を切ろうとしたところで出遅れたNO.86と奪い合いになり、
「「私達も見たいのだけど・・・」」
おすましキッズ達が水鉄砲をちらつかせながら二人に寄って行く。そこでNO.362がすかさず取り上げて
「こういうのは私が読むものでしょう」
とその場を制した。
「なになに・・・今宵は王子の誕生日を記念してお城で舞踏会を開きます。皆様ふるってご参加下さい・・・特に若い女性は必ず?・・・日時は」
「王子の誕生日とか言ってるけどきっと結婚相手を捜してるんだ!若い人は必ずとか言ってるもん!」
継母の言葉を遮るトミー
「ってことは・・・お姫様になれるって事!?超玉の輿じゃん!!」
夢見るNO.86
「「お姫様じゃなくてお后じゃないの?」」
鼻で笑うおすまし
「お姫様だって!素敵ね」
NO.2にささやくクキ
「に ち じ は!」
一同硬直。
「本日午後6時から・・・6時ですって!・・・お城にて。特に若い女性は必ず」
「二回も言わなくても分かるわよお母様!」
「そう書いてあるのよ。 お城より・・・特に若い女性は必ず。」
「切実なんだね」
「「まぁ私達はこの3人の姉妹の中で一番若いからもちろん行けるよね」」
「ちょっと失礼ね!あたしだって若いわよ!」
「僕だって若いよ!」
「静かになさい!はしたない!それより皆さん早く支度をしなくては!あと4時間しか無いわ。良いドレスあったかしら・・・」
「ウッソ、お母様も行くの!?」
「もちろん」
「あー・・・僕たちは3人でも大丈夫だよ?」
「知ってます。もちろん王子狙い」
「うわマジで!?」
「「一番はしたないよね」」
「お母様・・・」
「うるさいわねーほらさっさと支度しに行きなさい!ほれほれ!しっしっ!」

・・・一応、聞いておくべきよね。お話の都合上・・・
ということで、3人の姉が自分の部屋にそれぞれ帰った後、その場に残っていた継母にクキは聞いた。
「あの・・・お継母様・・・私も」
「あらあなたまだ居たの?何?」
「私も行きたいのですけど・・・若い女性はなるべく全員とお使いの方が言っていたし。招待状だって切実そうですし。」
「ふぅん・・・まぁ良いけれど・・・そうだ、行くのなら裏にある豆の山を良いものと悪いものと振り分けてからにして頂戴ね。」
裏の豆の山なら馬の世話をしている時に見かけたが、とても数時間で出来る程の量ではなかった。
「・・・・分かり、ました・・・」
「それじゃ。私も支度しないと。掃除も終わってないんでしょう?やっておいてね。晩ご飯は作らなくて結構ですから。」
「・・・・・・年増が(ぼそっ)」
「何か言った?」
「いえ何も」
あわてて口元を押さえた。

これがシンデレラのお話って言うのは知ってるけど、少し辛いかなぁ・・・
掃除をし終わり、クキは部屋で少し休みながら思っていた。
「ねぇNO.2、なんか行けそうにないよねー舞踏会・・・」
「僕はNO.2なんて名前じゃないのだけどと何度言えば・・・うーん・・・そうだよね。あのオバハンひっどいよねー!」
「うん・・・はぁ・・・」
「そんなに行きたいの?」
「そりゃあそうよー!憧れだもの!ちょっとまってー・・・多分ここらへんに・・・」
お話ならお母さんの形見のドレスとかが・・・それをチラつかせないと・・・
そんな少し腹黒い事を考えながらタンスを探すが、ドレスは見つから無い。と、ドアの傍に布を被った何かがあった。
「あ、そうだこれかな?」
言いながら布をゆっくり取ると、落ち着いた雰囲気の綺麗なドレスが現れた。
「あったあった。」
素敵なドレス・・・
顔には出さずに、思う。
「これね、お母さんの形見なんだ・・・」
「うん。前から大事にしてるって言ってたもんねシンデレラ」
「うん・・・これを着て、舞踏会に行きたかったなぁ・・・えへへ」
「そっかぁ・・・そうだ!ごめんシンデレラ、ちょっと僕ヤボ用が出来ちゃったから行くね!豆は一番最後にやる事をおすすめしておくよ!」
「え?わかった。」
走って壁の小さなヒビから出ていくNO.2を見送りながら、クキはこんなもんかと息をついた。

何度か継母達に呼ばれ、ドレスの着付けなどを手伝ったりしながら、一通りの仕事を片付けた頃。
「シンデレラ!シンデレラ!!」
急いだ様子でNO.2とネズミたち(心なしか皆何処かNO.2に似ていた)がクキの元にやってきた。
「どうしたの?そんなに急いで」
「ちょっとちょっと来て来て!!こっち!」
そう言ってネズミたちが見せてくれたのは、シンデレラの母親のドレスを少し作り直したものだった。サイズもデザインも見るからにクキにぴったりで、薄緑色のサテン生地のドレスに明るいピンクのリボンが巻き付けられ、細かなビーズがちりばめられている。
「っすてき!!!」
クキは自分が任務中で、シンデレラの役だという事も忘れて目を輝かせた。
「へへ、豆はね、鳥たちが分けておいてくれたよ!」
「ほんとに!?ありがとう!」
「どういたしまして!ね、着てみてよ」
ネズミたちにせかされて、早速ドレスを着て化粧をする。
「・・・どうかな?」
くるっと一度ターンしてみせた。ネズミたちは口々に素敵可愛いと言い合っている。
「素敵だよシンデレラ!これなら王子様もイチコロだね!!」
「あは!本当に有り難う!!」
「早く行かないとみんな行っちゃうよ?」
「うん!行って来ます!」
「いってらっしゃい!」

「それじゃあ皆さん。行きましょうか」
一方玄関では、NO.362が3人(?)の姉たちを連れて出ていくところだった。
「あー楽しみっ!」
「王子様と踊れるなんて僕もわくわくしちゃうよ」
「「選ぶのは私達だろうけどね。アッハッハ」」
「聞き捨てならないね」
「「え、お母様が反応・・・!?」」
「ちょっと待って!!」
呼び止める声とバタバタバタという音を聞いて4人は振り返り、クキの姿を見て驚いた。
「私も連れて行ってください。ちゃんと豆も振り分けました。」
急いで来たせいか息切れをしながら、クキは継母に聞いた。
「・・・・・・・・・いいでしょう・・・」
「「「お母様ぁ!!」」」
「仕方ないでしょう。ちゃんとドレスもどこから仕入れたのか知らないけど着ているし・・・」
「・・・!・・・お母様、この子の格好の」
と言ってNO.86はクキのドレスの裾を掴んだ
「どこが」
察したようにトミーはもう一方の裾を
「「ドレスだって」」
おすまし達もドレスの色々なところを掴んで
「「「言うのっ!!!」」」
全員で引っ張った。
びりびりびりっと音がする。
さっきまでクキの目に輝いて見えたドレスが、ばらばらになって姉たちの手の中にあった。
そして布きれと化したそれらを、踏んづけ、クキからさらにはぎ取り、破き、もみくちゃにして、笑った。
継母はそれを見ながらほぅ、と感心したように薄く笑う。
「そうだったわ。シンデレラ、そんな格好では連れていけません。お土産には舞踏会で出たお料理、ちゃんとタッパーに詰めて持ってきてあげますからね。」

姉たちがすっと散って、ネズミたちがクキの為に仕立てたドレスが、見るも無惨な布きれになってクキの前に現れる。
折角、皆が心を込めて作ってくれたのに・・・

クキの中で、ぷつんと何かが切れた

「っんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

気付けば自分の足が動いて手がトミーの頬を殴っていて。

気付けば自分の足がNO.86のお腹に入っていて。

気付けば自分の周りでおすましキッズがのびていて。

気付けば自分の目の前でNO.362が青い顔をしていて。


そこでようやくはっとした


こんなの、シンデレラのシナリオなんかにない。
ってことは・・・


任務・・・失敗?



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ものっそい遅いですすいません。しかもまだ続くって言う・・・どんだけ〜!
ようやく私が書きたかったシーン書けました。他にもあるのだけど。どこかって言うとナンバー3がキレるとこね。
一応ナンバー3バージョンとナンバー5バージョン(まだ書いてないけど)は最後の結末が違う仕様になるつもりです。どうなるんだか。

思ったより継母が動いてくれます。ギャグにおいて年増は大事なのかもしれないと思いました(笑
あと、「「台詞」」で括ってあるのはおすましキッズの台詞です。「「「「「台詞」」」」」でも良いんだけどいちいちウザイし、二重くらいが丁度良いかな、と。てゆか今回会話多かったような・・・(汗

あと今更気付いてなんかなんかなんですがシンデレラの姉って2人だよね。
いや、前書いた当初も「3人だっけ?2人だっけ?」って迷った記憶はあるんだけどね。前のやつ変えようかとよっぽど思いましたが、やめときました・・・作った手前どれもキャラ的に大事に思えてきちゃって。。。

ちなみにこれ、4時間くらいかけて一気に書き上げました。忘れかけてたシナリオ思い出して書いてるのにまた忘れたくなくて・・・なんて。暇人め!!



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