***帰り道***



「ナイジー・・・?・・・・・ナイジーッたら!!ちょっと!・・・・ナイジェル・ウノーーーッ!!」
「わぁっ!!・・・な、何だよ・・・」
ふと我に返ってみると、そこは遊園地のレストランで、向かい合わせにリジーが顔を膨らませて座っていた。
そうだ、思い出した。俺はリジーと遊園地に来て、昼飯を食べているところだった。
いつもの事だが、仕事人間と呼ばれている俺は、ガールフレンドとのデートの時でも任務の事ばかり考えているらしい。
「何だよ、じゃないでしょ!任務の事考えるのは止めて頂戴。・・・それより、私アレに乗りたい!!」
そう言って彼女が指差したのは、この遊園地で一番の名物といわれているジェットコースター。
その大きな乗りものは、叫びつづける人を乗せてたくさんの山と谷を走りつづけている。
「・・・・・・う・・・・・」
彼女の前で怖気づきたくは無いし、折角のデートなので、断われない。
気付いた時には、もう既にジェットコースターのシートベルトは締められていたわけで。

どれくらい長い間叫んだか分からないし、落ちる時のあのジェットコースター独特のふわっとする嫌な感じを何回も味わったのは覚えている。それ以外は記憶が飛んだと言っても過言ではない。


「あー楽しかった!!」
「ほ・・・本当にな・・・あはは・ははは・・・。」
笑ったつもりだが、おそらく笑いきれていないだろうし、顔は蒼白だったと思う。
ああ怖かった。死ぬかと思った。
そう思ったところで、リジーがまた大きな声を出した。
「わぁ、ナイジー!オバケ屋敷だってー!ジャパニーズゴーストだよー!!」
「悪ぃ。それはパス。」
即答だ。0コンマ1秒で答えたと思う。オバケは嫌だ。何処いったんだろうな。男の意地。
「えーーっなんでー。いいじゃない一緒に入りましょう。ね??」
甘えた目で見つめられる。俺はうっ・と唸った。その目は苦手だ。何でも言う事を聞きたくなってしまう。
「・・・・・・分かった。行こう。」
暗い雰囲気の大きなオバケ屋敷の建物に行くまで、俺は凄く足が重く感じた。

所々で日本のゴーストが出てくる中、リジーはとても楽しそうに叫んでいた。
俺はそれとはちょっと違う種類の叫び声をあげたかったが、あいにく声が出なかった。



そんなこんなで数時間。俺は彼女に振り回されてばかりだった。
今はその帰り道。
散々振り回されてヘトヘトな俺とは反対に、リジーはうきうきしていた。
天使の笑みで、彼女は言う。
「楽しかったわ!また行きましょうね!!」
「・・・・・あぁ・・・・。」
確かに楽しかった。リジーとは久しぶりのデートだったし、俺も久々に羽を伸ばす事が出来た。
だが、しかし、それでも、もう絶対絶叫マシーンとオバケ屋敷には入らないと、心に誓った。

二人で歩いていると、あっ・と声を上げてリジーが気がついたように言う。
「ねぇ、ちょっとお店に寄っていかない?」
彼女の目線の先にはショーウインドーに並べられた、洋服とかお菓子とかレインボーモンキーとか。
丁度メンバーに何か土産を持っていこうと考えていたところだし、そうだな、と言って俺たちは店の中に入った。
土産、と言っても此処は普通の店だし、お菓子を調達する程度の事だ。

たくさんのお菓子が並べられた棚を見て、どれを買おうか迷っていると、リジーがやってきてずいっと二つのぬいぐるみを突きつける。
「見て見てナイジーッ!!このレインボーモンキー、男の子と女の子がいるの!カップルなのよ!」
「ふーん。・・・それがどうかしたのか?」
「ふーん、じゃなくて!おそろいで女の子と男の子を買いましょうよ!私たちこれと言って一緒の物持った事ないなぁと思って。」
「えっ!?・・・・・うーん・・・。」
そう言って俺はレインボーモンキーの顔を二つ交互に見つめた。
大きな目の、少し太った虹色猿。心なしか女の子のほうはリジーに似ていた。
もしコレを買って持ち帰ったとすると、ツリーハウスの仲間にからかわれる事間違い無しだ。
俺はセクターVのリーダー。仲間にからかわれるのはリーダーとしてのプライドが許さない。

そんな理由で、俺は買わないと言って、リジーはとても残念そうに買うのを諦め、レインボーモンキー散策を再開すべく、カラフルな棚へと足早に去っていく。

チョコレートにキャンディ、ガムにスナック・・・たくさんのお菓子が入った籠を持って、レジに並ぼうと思った矢先に、会計を終えたリジーがやって来る。手には新しく買ったレインボーモンキーが。どうやら新種らしい。

「私はお買い物終わったけど。」
「あぁ、じゃ、外で待っててくれ」

分かった、と言って店の外に出て行く彼女を見送って、俺はレジへと急ぐ。
途中で、目の端にカラフルな棚が映った。真中に先ほど言っていたカップルのレインボーモンキー。仲良くそっと寄り添うようにして座っている。
俺はそれをしばしの間、眺めていた。

「・・・・・・・・・・・」



「ごめんごめん。待った?レジが込んでてさ。」
数分後、俺は彼女と合流。手にはお菓子の入った袋。
「大丈夫よ。じゃ、帰りましょうか。」

そして、ヒミツのプレゼント。

すぅ、と息を吸って、何時渡そうか、タイミングを計る。

結局別れ際の最後の最後に、「あのさ、」と切り出して渡す事になったのだけれど。

彼女の喜んだ顔がとても可愛くて、それと同時に自分が仲間にからかわれる姿がくっきりと見えた。

それでもまぁ、彼女が嬉しければそれでいいのだけれども。

無意識にそう思った俺は、自分に苦笑して、ツリーハウスへの帰り道を急いだ。


*FIN*
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なんちゅうか、なんちゅうか、のろけ話です(爆
ごめんなさい。リジーを小説で描いたの初。ってか一生書かないと思ってたのに不思議ーっ。
いやー、自分の書きたいと思っていた物とはかなーーりかけ離れた物になりましたが、
これはこれで。(いいのか!?
最初の遊園地のところ、ぶっちゃけいらないかも。とか。
でもね!私、彼らの日常的なデートゥが書きたかったらしいから!
へタレで彼女思いなナイジーが大好きですw
そういえば、リジーってレインボーモンキー好きなんだろうか。
・・・まぁそれは、女の子なら誰でも好きなレインボーモンキー精神にのっとって!(言い訳


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